自然環境中には、未だゲノム配列の決まっていない生物種も含めて極めて多くの生物が、相互に影響を及ぼしながら棲息している。これまでのように単一生物種のゲノム配列決定だけでは、そういった生物間相互作用、あるいは生物と環境との相互作用を観察することは難しかった。しかしながら、近年、メタゲノム解析手法の発展とともに、ある環境サンプル中の生物が持つゲノム配列を網羅的に決めることができるようになった。この技術により、生物と環境との関係への理解が飛躍的に進むものと期待されている。本課題の目的としては、メタゲノム配列を利用して、環境の違いが、環境ゲノムの機能とどのような関係にあるのかを明らかにすることである。そのために、まず、自動アノテーションツールKAASを利用して、メタゲノム中の各遺伝子配列にKEGGデータベースで利用されるKOを付けた。そのKOのリストをもとに、KEGGで提供されるさまざまなパスウェイデータにマッピングを行った。KEGGでは代謝パスウェイは、階層的にカテゴライズされており、そのカテゴリに基づいて再構築されたパスウェイの分類が可能である。多くのメタゲノムデータをマッピングした結果、そのカテゴリにおける差は、大きくはないことがわかった。しかしながら、メタゲノムデータでは、サブネットワークがより結合しやすいという傾向を発見した。このことにより、環境中の微生物は、代謝物質のやりとりにより相互作用している可能性が示唆された。
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