研究課題
ポリエーテル化合物とは、テトラヒドロフラン(THF)やテトラヒドロピラン(THP)が複数連結したポリエーテル骨格を有する化合物の総称であり、イオノフォア活性、イオンチャネル阻害活性、抗腫瘍性など多様な生理活性を示す。構造上の特徴であるポリエーテル骨格は、ポリエンに対するエポキシ化と生じたエポキシドの連続的な開環反応により構築されると推定されている。本研究では、骨格構築を担う2種類の酵素(エポキシ化酵素、エポキシド加水分解酵素)の機能を化学的に解明し、生物によるポリエーテル骨格構築機構の解明を目指した。本年度は、モネンシン生合成に関与するエポキシド加水分解酵素の機能解析を試みた。常法に従って2種のエポキシド加水分解酵素を組みかえ酵素として調製した後にin vitroでの酵素反応を検討したところ、所期の5-exo環化反応を触媒することを見いだした。これは、モネンシン生合成系におけるエポキシド加水分解酵素の機能を化学的に解明した世界で初めての実験結果である。また、エーテル環の数が最も多いイオノフォアポリエーテルであるキジマイシンの生合成遺伝子クラスターの取得を試みたところ、約60キロ塩基対からなる生合成遺伝子クラスターの一部を取得することに成功した。以上、本研究成果は、ポリエーテル骨格構築における「酵素的エポキシド開環反応」を解明する上での礎となる学術的に重要な知見である。
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Organic Letters
巻: 13 ページ: 1638-1641