研究概要 |
ハエトリソウクローンを用いた生物検定法を指標に「記憶物質」の探索を行ったところ、水可溶成分にのみ顕著な閉葉活性が認められ、さらに分子量による分画後では、3,000以下の低分子画分と、3,000-10,000の高分子画分にそれぞれ閉葉活性が認められた。そのうち、分子量3,000以下の低分子画分が最も強い活性を示したため、分子量3,000以下の低分子画分についての精製を行った。 まず、ゲルろ過クロマトグラフィー精製を行い、5g/Lで活性を示す低分子画分を得た。続いて中圧逆相クロマトグラフィーによる段階的溶出を行い、1g/Lで活性を示す活性画分を得た。さらにHPLC精製により、0.1g/Lで活性を示す活性画分を得た。最後に再びHPLC精製を行い、高純度で活性物質を80μg単離できた。得られた活性物質は極微量であったが、コールドプローブを装備した800MHzMIRを用いて各種測定を行うことにより構造決定を行うことができた。また、金属カチオン測定により、活性が金属カチオンに大きく依存するということが示唆された。そこで、実際に活性物質のカウンターカチオンの種類による活性の変化を調べたところ、遊離カルボン酸の場合は最終精製物とほぼ同等の活性を示す一方、ナトリウム塩の場合は約10倍に、カリウム塩の場合は約100倍の活性を示し、カウンターカチオンの種類によって活性が大きく変化するという興味深い結果が得られた。この原因については今の所よくわかっていないが、これらの結果から、もともとこの低分子「記憶」物質は植物体内においてカリウム塩の状態で存在しているのではないかと考えられた。
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