本研究では、人工核酸分子の機能の拡張性と構造設計の簡素さに着眼し、独自に開発した薬物包摂人工核酸アプタマーを改変設計することによって、薬物を環境に応じて包摂したり放出したりするようなインテリジェント核酸を作製し、さらに、それを薬物が修飾されたナノ担体表面に、段階的に被覆することによって、環境応答型薬物ナノキャリアの創製を試みた。まず、薬物担体(サリドマイド誘導体)および連結アプタマーの調製を行った。サリドマイド誘導体を包摂する人工核酸アプタマーの修飾基をそれぞれ化学的に改変し、これらのアプタマーの標的分子に対する結合親和性を、表面プラズモン共鳴法などを用いて調べたところ、化学改変の部位や様式によっては結合活性が著しく低下するものがみられた。特に、包摂部位近傍の化学改変はその活性に大きく影響をおよぼす傾向がみられたが、二次構造予測より二重鎖を組み比較的部分構造が安定であると考えられる部位への改変は、結合活性が概ね保持されることが確認された。次に、制ガン剤として知られるカンプトテシン誘導体についても、同様にナノキャリアを作製するために、カンプトテシン誘導体に結合するアプタマーの取得に着手した。市販のカンプトテシンを原料として、5段階の反応を経て誘導体化を行った。水溶性のリンカーが付加された7位置換誘導体を得、これをNMRおよびESI-Massなどにより同定した。得られた誘導体は、高い水溶性を示し、セレクション・ゲルに高密度に固定化できることを確認した。
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