本研究課題は、二次代謝生合成遺伝子クラスターにコードされる機能未知のラジカルSAM酵素の機能解析を通じて、多種多様な化学構造を有する生理活性天然物の生合成的知見を得ることを目的としている。 まず、アミノグリコシド抗生物質ネオマイシン生合成遺伝子クラスターにコードされるラジカルSAM異性化酵素NeoNに関しては、酵素の精製に至っていないものの鉄-硫黄クラスターの再構成方法に関して重要な知見を得ることができた。大腸菌異種発現系の改良も行なったので、今後さらに検討する予定である。 ゲンタミシン生合成遺伝子クラスターにコードされるラジカルSAM酵素に関しては、その基質として考えられるゲンタミシンA2を得るべく検討した。まず、NAD依存型脱水素酵素SCO6159を用いてミリグラムスケールでUDP-キシロースを調製した。ついで、糖転移酵素GntDを大腸菌にて発現させて、糖受容体としてパロマミンを用いて酵素反応を検討した結果、ゲンタミシンA2が生成することが明らかとなった。現在、酵素的に大量にゲンタミシンA2を調製すべく検討を行っている。ラジカルSAM酵素の発現にも成功しており、酵素反応を検討できる段階にある。 また、昨年度にラジカルSAM酵素遺伝子断片が含まれていることを確認した微生物のドラフトゲノム解析を行い、カルバペネム抗生物質の生合成に関与すると推定される遺伝子クラスターを見いだすことができた。現在、この遺伝子クラスターを異種発現させてカルバペネムの生合成に関与することを確認すべく研究を進めている。 本研究を総括すると、ラジカルSAM酵素遺伝子が新規生理活性二次代謝遺伝子クラスターを特定するための有用なプローブになることが明らかとなった。またその機能解析は、鉄-硫黄クラスターの再構成方法などを改良する必要があるが、反応条件さえ整えば酵素触媒能を見いだすことが可能であることがわかった。
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