タンパク質のミスフォールディングは、アルツハイマー病等の種々の神経変性疾患に深く関与している。このタンパク質のミスフォールディングの機構解明やミスフォールディングを阻害する分子の構築は、アルツハイマー病等の神経変成疾患の治療や予防に繋がるものと期待される。これまでに、アミロイド構造を模倣した分子表面をもつ擬Aβ提示タンパク質によるAβの集合化阻害およびAβの神経細胞毒性の抑制について評価した。その結果、特定のモデル神経細胞に対して、擬Aβ提示タンパク質がAβの集合体形成を阻害することで、その細胞毒性を抑制できることを明らかにした。 そこで、擬アミロイド提示タンパク質を用いる手法のアルツハイマー病Aβ以外での拡張を目指し、ポリグルタミン(polyQ)タンパク質を標的とした研究を行った。擬Aβ提示タンパク質の設計手法に基づき、GFPのβバレル表面にpolyQ様アミロイド構造を提示した擬polyQ提示GFPを設計・調製し、得られたタンパク質の構造特性や安定性等の性質について検討した。また標的となるハンチントン病モデルとして、種々のグルタミン鎖長をもつpolyQタンパク質を設計・構築し、擬polyQ提示GFPとの相互作用について解析を行った。構築した擬polyQ提示GFPとpolyQタンパク質との結合力は、polyQタンパク質のグルタミン鎖長に依存して強くなることが分かった。また擬polyQ提示GFPは、適度に会合したpolyQタンパク質により強く結合することも明らかとなった。以上から、βバレルタンパク質表面を分子認識場として用いる擬アミロイド提示タンパク質の有用性が明らかとなった。
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