研究概要 |
近年、海洋から得られる天然有機化合物、いわゆる海洋天然物をモチーフとした医薬品が多く開発されており、これらは有用な医薬リード化合物として注目を集めている。高度に酸化された長い炭素鎖を有するポリオール天然物は、海洋天然物特有の化合物群である。本化合物群は、複雑かつ巨大な構造と強力な生物活性を有することから、合成化学・薬理学・分子生物学など多くの学術分野から注目を集めている。本研究では、2,860の分子量を有するポリオール海洋天然物シンビオジノライドの完全構造解明を目指し、合成化学的なアプローチを展開した。平成23年度の研究成果について、以下に記述する。 1.C79-C97フラグメントの立体発散的合成 アルキンとエポキシドとのカップリング、および酸触媒による分子内環化を行うことでスピロアセタール部位を立体選択的に構築した。さらに、アルデヒドとジチアンとのカップリング、および適切な保護基選択によるジアステレオ選択的還元を行うことで、提唱立体構造を有するC79-C97フラグメントとその立体異性体を、それぞれ立体選択的に合成した。今後は各種合成品と天然物とのNMRデータの比較を行い、本フラグメントの立体構造を解明する予定である。 2.C94-C104フラグメントの立体発散的合成 Achmatowicz反応とジアステレオ選択的ジヒドロキシル化を鍵反応に用いることで、テトラヒドロピラン部位を立体選択的に構築した。さらに、アルデヒドとジチアンとのカップリングと続くジアステレオ選択的還元により、提唱立体構造を有するC94-C104フラグメントとその立体異性体を、同様の合成ルートにてそれぞれ立体選択的に合成した。今後は合成した各種立体異性体と天然物とのNMRデータの比較を行い、本フラグメントの立体配置を決定する予定である。
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