癌に特徴的な微小環境(低酸素環境)を感受して蛍光がOFF状態からON状態へと切り替わり、癌部位を高選択的に可視化する蛍光性小分子プローブの開発をおこなった。SNARFというpH感受性の蛍光色素を基本骨格とし、誘導体化することで、癌の低酸素環境でおこる選択的な還元により蛍光のスイッチが入り、プローブ周囲のpH(癌に特徴的な低pH環境)を検出できるようなSNARF誘導体の創製に成功した。このプローブを用いることで、実際に低酸素環境下にある還元酵素の選択的な検出に成功し、低酸素環境下で培養した細胞のイメージングにも成功した。また、その開発過程において種々のSNARF誘導体を作成することで、その蛍光特性を自在にコントロールすることができる戦略を獲得することに成功した。実際にその戦略を用いることで、これまでのSNARF誘導体では困難であった細胞内に取り込まれて初めて蛍光がON状態となる細胞内pHプローブの開発に成功し、薬剤添加に伴う細胞内pH変化の定量的な計測にも成功している。本誘導体は、未反応の誘導体の洗浄による除去が困難であるin vivoでの利用が期待されることから、今後その方向性での利用について検討をおこなっていく。また、本戦略のメカニズムの解明にも努め、その作用機序について明らかとした。その結果、本戦略は極めて一般性が高く合理的なデザインが可能なため、様々な外部刺激に応答して蛍光のスイッチがON状態へと切り替わる蛍光性小分子プローブの設計が可能であることが示唆された。今後、生物学的に有用な検出対象の高選択的な検出を目指し展開していく。
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