本研究では、ヒト由来のRNA分解酵素に対して機能性人工ペプチドを導入することによって、本来の基質であるRNAとは異なる標的分子認識能を新たに付与した人工酵素の調製系を確立することを目指している。本年度は以下の研究成果を得た。 1.構造情報に基づく機能性人工ペプチド挿入RNA分解酵素の設計RNA分解酵素の結晶構造に基づき、酵素活性中心から離れた位置のループ領域に対して、がん関連抗原である上皮増殖因子受容体特異的人工ペプチドを挿入した複数種の配列を作製し、各々のモデリング構造を基に詳細なペプチド挿入箇所を決定した。 2.ペプチド挿入RNA分解酵素の大腸菌分泌発現・調製系の構築設計した配列を基にペプチド挿入RNA分解酵素の大腸菌分泌発現ベクターを作製し、可溶性タンパク質として発現・調製系の構築を試みたところ、宿主に対する細胞毒性に起因すると考えられる発現の不安定さが顕著に見られたことから、安定な分泌発現・調製系の確立には変異導入などによる細胞毒性の軽減が必要と考えられる。一方、培養条件などの検討により不溶性タンパク質として得られたため、添加剤導入段階透析法を用いて巻き戻し操作を行い、可溶性タンパク質として再生することができた。 3.ペプチド挿入RNA分解酵素の機能評価RNA分解活性について酵素活性染色法により評価した結果、作製したペプチド挿入RNA分解酵素はRNA分解能を示したことから、酵素活性を喪失することなく、外来の機能性人工ペプチドを導入することに成功した。
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