海洋生物は新しい生理活性物質の宝庫として考えられており、医薬品のリード化合物を海洋天然物に求める研究も活発に行われている。最近では海洋生物由来の医薬品候補などがいくつか現れ、有用物質素材として注目されている。これらの中には、シアノバクテリア由来であると推定される化合物も多く存在する。そこで、シアノバクテリアは生物活性物質の探索源として有望であると考え、本研究に着手した。 沖縄県で採集したシアノバクテリアLyngbya sp.を用い、HeLa S_3細胞に対する細胞毒性を指標にして新規生理活性物質の探索を行ったところ、2種の細胞毒性物質、Bisebromoamide及びBiselyngbyasideを単離に成功し、その絶対立体構造を決定した。 Bisebromoamideは多くのDアミノ酸及び異常アミノ酸を有する鎖状ペプチドであり、各種癌細胞に対して強力な増殖阻害活性を示す(GI_<50> 40nM)。また、非常に強いプロテインキナーゼ阻害活性を示し、特にERKのリン酸化を10~0.1mMにおいて選択的に阻害し、AKT、PKD、PLCg1やS6リボソームタンパク質などのリン酸化には全く影響しない。 Biselyngbyasideは新規18員環マクロリド配糖体であり、HeLa S_3腫瘍細胞に対して強い増殖阻害活性(IC_<50> 0.1mg/ml)を示す。また脳腫瘍細胞SNB-78(GI_<50> 36nM)および肺癌細胞NCI H522(GI_<50> 67nM)に対して特に強い増殖阻害活性を示し、新規の作用機作を持つと期待される化合物である。
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