研究概要 |
本研究の目的は,アルツハイマー病に代表される認知症をタンパク質品質管理にまつわる糖鎖構造多様性パターン「糖鎖プロファイル」の変化で理解することにある。そこで独自のデザインの蛍光糖鎖基質と健常およびアルツハイマーモデル動物由来の小胞体画分を反応させ,細胞内糖鎖プロセシングを再現したのち、反応液の分析によって得られる「再構成糖鎖プロファイル」の比較を行う。 本年度は昨年度に確立した再構成糖鎖プロファイル法を用いて、いずれも加齢に伴う疾患であるアルツハイマー、認知症および骨粗鬆モデルマウスに対して疾患の評価を行った。その結果、3者の間で糖鎖プロセシング状況が異なることが分かった。とくに一見似ているが構造異性体の関係にある糖鎖の生成比率が疾患によって大きく変化することを見出した。これらの糖鎖はそれぞれ糖タンパク質の分泌および廃棄を司るシグナルであり、疾患によってタンパク質生合成に係る品質管理機構が有意に影響を受けることが明らかとなった。一方、糖鎖の生成に関わる酵素の発現状況を検討したところ、それらの発現の増減は必ずしも実際の糖鎖生成パターンを良く説明する結果ではなく、代謝産物を直接分析する本手法の有効性が確認された。 本研究では、各糖鎖プロセシング酵素の個別の活性についても併せて検討し、酵素発現、酵素活性および酵素によって生成する代謝産物情報を横断的に解析することで、これまでにない情報量の多い疾患評価手法を提唱することができたものと考えている。
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