本研究の最終目標は疫病菌の新規防除法の開発であるが、その前段階として疫病菌有性生殖メカニズムを明らかにしていく必要がある。申請者は疫病菌有性生殖に於ける卵胞子形成に重要な役割を果たす鍵となる物質・1の立体化学が活性発現に重要であることを明らかとしている。 そこで申請者は本研究に於いて・1の誘導体の合成と構造活性相関及び・1をプローブとするケミカルバイオロジーに関する研究を行い、疫病菌卵胞子形成メカニズムの解明する為の手法を開発することを目的としている。申請者らのこれまでの研究により・1の活性発現に7位及び11位の立体化学が重要であることが明らかとなっている。そこで、誘導体の候補としてはまず、1位及び16位水酸基の様々な修飾体を合成した。その他の誘導体としては4位カルボニル基の還元体やその体を合成した・1より容易に導くことが出来た。申請者らが以前開発した合成ルートに従えば、3位および15位の立体異性体(非天然型)を合成することは可能ではあるが、効率の面でやや問題を抱えていた。そこで、・1の非天然型立体異性体の効率的な新規合成法を新たに開発した。その合成法により、3位および15位の立体異性体だけでなく、3位デメチル体の合成を行った。合成したそれらの生物活性を評価した結果、活性発現には3位、15位の立体化学は重要ではないこと、16位水酸基は活性発現に重要ではなく、誘導化が可能であるというα1を基盤とするケミカルプローブ合成の為の重要な知見を得ることに成功した。
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