菌根共生は植物と菌類との相利共生的関係として知られ、多くの陸上生態系においてほぼ普遍的にみられる生物問相互作用である。この関係は、生態系機能に関与する重要な生物間相互作用として認識されており、菌根共生菌の生態研究は現在世界的に精力的に行われている。しかし、菌根共生菌の種多様性にどのような規則性があるかについて生態学的アプローチから実証的に示した研究は殆どない。本研究では、ツツジ属植物と菌根共生するOidiodendron嘱をモデル材料とし、本邦の異なる気候帯や植生帯における種多様性の分布パターンを実証的に明らかにすることを目的とした。さらに、そのパターンの制限要因を、環境要因や生理生態的特性の点から解明することを目指した。本年度もまず、ツツジ根の採取、本属菌の分離・培養を昨年度に引き続き行った。獲得した菌株に関して形態観察とrDNA ITS領域の塩基配列に種同定を行った。昨年度までのデータを加えると、本邦の100地点において921の培養株を確立し、未記載種を含む27種の分布を確認することが出来た。菌根形成実験の結果、これらの殆ど全ての種が菌根形成能力を有することが明らかになった。緯度や標高を問わず広域的に分布するO. maius以外の数種では、それらの分布が年平均気温や植生に影響を受けている可能性が示唆された。全ての種を対象に成長最適温度、至適pHの評価、資源利用様式に関する培養実験をおこなったところ、一部の種では成長最適温度と分布に対応関係がみられた。
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