ジョージア州アトランタにおける公共交通機関アトランタ大都市圏快速交通公社(Metropolitan Atlanta Rapid Transit Authority)の形成過程に注目をし、その設立がいかにアトランタ大都市圏に住む人種・階級・ジェンダーを異にしたあらゆる集団間の関係の変化を示すものであったのかを調べた。自動車社会のアメリカにおいて、公共交通網(電車とバス)を設置することが、社会的公正の面においていかなる意味を持ったのかを同時に問うた。法的な人種隔離の撤廃、公民権法また投票権法の制定など、公民権運動が「一定の成果」を上げるなか、「偉大な社会」プログラムの一環として実現した公共交通網の整備であったが、それはそもそも様々な格差の解消につながるものではなかったことを具体的に示した。その際、為政者や都市計画家のみならず家事労働者組合や園芸クラブ、住宅所有者の会メンバーなど市井の人々が残した史料を題材として使用した。
|