本研究の目的は、19世紀末から20世紀初めのアメリカ合衆国において、越境的で複雑な人種・エスニック関係の中、家庭論をめぐる言説形成や社会改革運動に、移民女性たちが主体・客体としてどう閣わったのか分析することである。 本年度は、まず、アメリカ合衆国の移民法や各移民集団の歴史等、アメリカ合衆国の移民史を二次文献を中心にして体系的に学んだ。また、アメリカの移民史全般の議論を深めるため、アメリカ学会、日本アメリカ史学会などの大会に参加した。 次に、日系移民の移民メディアを調査し、特に、日系移民メディアにおける産児制限論と母性論の関わりについての論文を推敲した(Japan Forum(Routledge)より2010年5月に発行)。 また、日系移民研究の理解を深めるため、立命館大学米山裕先生等が中心で開催された京都の各大学の研究会にも参加した。 さらに、欧州系移民のケースの理解を深めるため、アイルランド糸や東南欧糸の移民集団の歴史と当該期の社会・政治的な文脈を二次文献を中心に調査した。特に、それらの集団の様々な言説と家庭論との関わりを調査するため、移民協会と主要な移民メディアに注目した。ミネソタ大学より東欧系移民の新聞二紙のマイクロフィルムを数年分取り寄せた。また、クロアチア民族協会の会員規約の分析を、購入したソフトウエア(N-vivo等)を使って進めている。資料収集と分析の過程で、資料の複写、整理、保存箏に必要な機器(スキャナーなど)、ソフトウエア(Endnoteなど)を科研費で購入した。 以上、平成21年度の研究調査を通じ、人種・民族的カテゴリーの構築を通じ経済・政治・文化・社会的に他者化されていくアジア系移民と、白人アメリカ市民としての同化を目指したヨーロッパ系移民を比較しつつ研究を進めることができた。
|