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2011 年度 実績報告書

中国人の戦争記憶-被害実態と記憶の形成過程-

研究課題

研究課題/領域番号 21710253
研究機関東京大学

研究代表者

石井 弓  東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特任講師 (50466819)

キーワード記憶 / オーラルヒストリー / 中国農村研究 / 戦争記憶 / コミュニティー / 日中戦争研究
研究概要

具体的内容
(1)戦争体験の掘り起し:戦争中漢奸とされた人々の出身村及びその家族を中心に聞き取り調査を行った。戦争当時日本軍の通訳を務めた人物Aについて、その家族と彼の住んでいた村の村人から聞き取りを行った。それと対照させる形で、戦争中抗日村長をしていた人物Bについても村人たちに聞き取りを行った。村人たちの評価は、歴史評価と逆で、Aの人柄をほめ、Bを恐れているようだった。彼らの戦後の運命が現在の評価にも影響を与えていることが分かった。また、日本軍宣伝隊長でもあったAは、「順口溜」を宣伝メディアとして活用しており、それも収集に成功した。
(2)「順口溜」の調査:「趙家荘惨案」(趙家荘での虐殺事件)を旅行記の形式で歌った「順口溜」について、歌中に歌われる村々を訪ね、歌の内容について聞き取り調査を行った。その結果、歌詞にある村名と歌の共有範囲がほぼ重なることが分かった。また、歌われている人物や地名は全て実在し、歌中の旅行ルートは古来から頻繁に往来のあるひとつのコミュニティであることが明らかになった。調査結果に基づき、日本現代中国学会において発表「「順口溜」から読み解く戦争の記憶」を行った。
(3)雨乞の調査:「趙家荘惨案」の順口溜が歌う範囲は、文革前まで雨乞いの活動を共同で行っていた範囲であることが聞き取り調査より明らかになった。旅行記は雨を降らせるために、「大王像」を神輿に載せて担いで歩いたルートであり、像を担いで歩いた道沿いにある村全てに雨が降ったと言われる。今回は、「大王廟」を今も残す水嶺底へ調査に行き、その村には2つの大王像があり、ひとつは「順口溜」に歌われる地域を練り歩くもの、もう一つはその逆方向にある盂県を練り歩くもので、二地域を範囲とするコミュニティの起点になっていることが分かった。
(4)農村演劇の調査:7月15日(旧暦)の農村演劇(晋劇)を参与観察した。3村の演劇を参与観察し、観衆の様子、舞台裏、演劇誘致の事情について聞き取りを行った。また、この地域で演じられる晋劇の演目と現地の伝承との関連について考察を行った。
意義及び重要性
オーラルヒストリーによる各調査結果は、これまで歴史学によっては論じられなかった問題を捉えている。中国農村の前近代的社会によっては、口頭伝達の方法によってコミュニティーが構成され、人々の記憶や自己意識を作り上げてきており、村人の視点からこれらを調査・記録したことは、今後の中国農村コミュニティー研究に寄与する成果であると言える。また、「漢奸」に関する調査は、政治的な問題から日中戦争史の中でほとんど言及されておらず、歴史の空白を埋める意義を有する.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2011

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 「順口溜」から読み解く戦争の記憶2011

    • 著者名/発表者名
      石井弓
    • 学会等名
      現代中国学会
    • 発表場所
      近畿大学
    • 年月日
      2011-10-23

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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