ソロモン諸島ウェスタン州で2007年4月に発生した、M8.1の地震と津波の被災地域では、漁湧農耕という生業基盤や、沿岸部の居住地を失う住民があった一方で、復興活動の中で市場経済化の影響を受けた住民もいる。今年度は、災害に関わる変化が、感染症・低栄養といった病と、糖尿病・肥満・高血圧といった現代的な生活習慣病の疫学パターンに、どう関係しているかを検討するために、2009年8月に4村で調査を行った。マラリア陽性者(614人中Pv陽性1人)、成人の低栄養(BMI<18.5kg/m^2)(1.5%)はほとんどみられなかった。しかし、5歳未満小児の感染・炎症(CRP≧1.0mg/dL)は、津波で集落が全壊した遠隔地シンボ島のTA(28.6%)と、同じく全壊したが都市近郊部のギゾ島TI(18.4%)に多かった。成人の糖尿病(HbAlc≧6.5%)は、TIで8.9%あったが、他の村ではほとんどみられなかった(0-1.7%)。高血圧(SBP≧140mmHgもしくはDBP≧90)は、地盤崩壊により集落が半壊したラノンガ島Mに多かった(45.8%)。肥満(BMI≧25)はTI(62.5%)とM(51.7%)に多かった。直接の被害を受けなかったニュージョージア島0では、傑出した指標値はなかった。購入食品への依存はTIで高かったが、TIだけでなくMの住民も農耕や漁撈からの生産に、不満が多かった。これらのことから、生活基盤の破壊を、都市での労働・食品購入で代替しているTIは、感染症と生活習慣病両方のリスクが、高いと考えられた。また、過度な近代化を引き起こさない復興が望まれるが、TIやTAにはインフラ設備も必要だと考えられた。
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