研究課題
本研究の目的は、アフリカの乾燥・半乾燥地域に暮らす遊牧民が、地球規模な気候変動にともなう自然災害(旱魃、集中豪雨など)の増加と、グローバリゼーションや市場経済化にともなう社会・経済環境の急速な変化にどのように対処して生業を維持しているのかを明らかにすることである。21年度は実施計画の通り、現地調査、資料収集と比較研究、そして研究グループの形成を行なった。まず、2009年7月にケニア共和国の遊牧民を対象に3週間の現地調査を行なった。北ケニアは2008年から干ばつが発生し、2009年の夏には状況が深刻化していた。現地調査では遊牧民の放牧キャンプに訪ね、家畜の移動や水の利用、治安問題や食料援助について集中的に聞き取りを行なった。次に、2009年の調査データと、これまでの先行研究の結果、そして他の地域で調査・報告された遊牧民の旱ばつの対応と比較研究した。その結果、旱魃の発生頻度や期間が30年前と比べるとより不安定になったこと、グローバルな気候変動との関係性やローカルな災害予測の研究が不充分であること、従来の遊牧の知識と技術が治安や民族間問題といった社会条件によって十分に活用できていなことなどが明らかになった。この結果は、2010年3月の国際ワークショップで発表した。さらに、2009年には、京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科や国立民族学博物館の若手研究者を中心に、(1)アフリカ乾燥地域の植生と人為撹乱、(2)遊牧社会の生存戦略と発展、という二つの研究グループの形成に参加し、研究会や勉強会を開催した。これらの研究会の協力によって、2010年3月にケニアやナイジェリア、中国の研究者を招いて国際ワークショップを開催し、グローバル時代における遊牧民の状況について具体的な議論を行なった。
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MILA : A Journal of the Institute of Anthropology, Gender and African Studies Vol.10.
ページ: 69-80