本研究の目的は、アフリカの乾燥・半乾燥地域に暮らす遊牧民が、地球規模な気候変動にともなう自然災害(旱魃、集中豪雨など)の増加と、グローバリゼーションや市場経済化にともなう社会・経済環境の急速な変化にどのように対処して生業を維持しているのかを、フィールドワーク、先行研究との比較、そして地域間の比較研究をとおして明らかにすることである。 23年度は実施計画の通り、これまで収集した資料/データの分析とまとめ、現地での補足調査、資料収集と比較研究、そして研究成果の発表/公開を行なった。 まず、アフリカ遊牧社会に関する先行研究の調査・報告を生態学/人類学/政治経済/開発などのカテゴリーでデータベース化しレビューを行なうとともに、2009年以来本研究課題の代表者が行なった東アフリカ乾燥地域の遊牧社会を対象とした現地調査のデータを分析した。そのうえ、遊牧の持続と変容に注目し、自然災害や社会・経済の変化にどのように対応しているのかを比較研究した。その結果、過去30年間に遊牧民が暮らす乾燥地域には、干ばつや集中豪雨などの自然災害の発生頻度と強度が高くなり、人びとの生存基盤が脅かされていることが明らかになった。それに対して、自然災害とグローバルな気候変動との関係性やローカルなリスク・マネジメントの研究が不充分であり、各国政府や開発援助機関が食糧・医療援助といった限られた対策しか行なってこなかった。一方、遊牧民は従来の遊牧の技術と戦略を駆使するとともに、生業の多角化を図ることによって自然災害を乗り越えてきたことが明らかになった。しかし、2011年に起きた大干ばつのような大きな自然災害に対して、ローカルな対応だけでは限界があった。この大干ばつによる影響について現地調査を行ない、現在データの分析をおこなっている。また、これまでの研究成果を著書にまとめて出版した。
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