アフリカにおいて集約的農業と作物の遺伝資源保全を両立させる地域社会の特徴を明らかにする一環として、東アフリカ高地のバナナ栽培を基盤とする生業システムの比較研究を平成21年度よりおこなっている。平成23年度は本課題研究の最終年度として、ウガンダでの現地調査と二次資料の分析とともに、研究をまとめる作業を進めた。 ウガンダにおける現地調査は平成23年8~9月に実施した。ウガンダ中部ラカイ県の農村にて、前年度の調査の続きとして農家への聞き取り調査および畑の測定をおこない、ミクロなレベルでの農家の実践と品種多様性の実態を把握した。なお、当初計画していた料理用バナナの粉末輸出プロジェクトの視察と近隣農家への聞き取り調査は、加工施設が完成に至っていなかったため行わなかった。 日本では、主に京都大学アフリカ地域研究資料センターにおいて文献資料収集をおこない、平成22年度までに集めた資料も含めて、農業の「集約性」と「遺伝資源保全」の観点からウガンダ西部、同中部、ルワンダの計三地域の状況を整理・比較した。 これらの作業の結果、三地域における自然条件、農業体系、品種多様性、住民の実践の諸関係の特徴が明らかになった。また研究の過程で、この一帯の「樹木畑(アグロフォレストリー)」を品種のみならず種レベルで把握することの重要性や、選好される樹種が地域・農家によって異なる点も明らかになった。 なおこれらの結果の一部は、ケニア・ナイロビでの会議において、現地との連携方策をさぐる観点から発表を行い、日本、ウガンダ、ケニアの民族生物学者と意見を交換し、住民の実践活動に結びつけるための知見を深めることができた。
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