本研究は東アフリカ、タンザニア南部の住民参加型農村開発に焦点を当て、農村開発のもとで発現する地域住民の主体的・創造的な対応を長期的・実証的な調査研究により解明することを目的としている。とくに開発を推進する側が意図しない、いわば「副次効果」とみなされていた部分にこそ住民の主体性・創造性が反映されるとの考えにたち、その実態を明らかにするとともに、それが開発実践にフィードバックされることの重要性を提起する。この内容に関連する本年度の研究実績は以下のとおりである。 (1)研究環境の整備:関連書籍・論文およびパソコン周辺機器を購入し、研究を進めるうえでの環境を整備した。 (2)学会・研究会発表:これまでの調査研究のうち、とくに開発プロジェクトのインパクト評価に関する内容をまとめ、1つの国内学会と2つの国内研究会で発表し、関心領域の近い研究者との意見交換をおこなった。 (3)論文・著書の発表:参加型開発プロジェクトのインパクト(「副次効果」)について論じた論文(2)・著書(2)、およびフィールドワークと地域社会への支援の関係を論じた著書(1)を発表した。 (4)現地調査:現地調査のためタンザニアに30日間渡航した。県農業畜産開発局において現在進行中の開発政策の詳細について聞き取りと資料収集をおこない、その内容と開発プロジェクトのインパクトの関連に着目しながら住民活動の現在について調査した。その結果、調査地では住民が過去の開発プロジェクトにおける経験を活用しながら、開発政策による資源を有効に普及させる独自の仕組みを形成しつつあることが明らかになった。平成23年度の現地調査によってこの詳細を明らかにする予定である。 (5)研究成果の公開:研究内容を紹介するWebページを作成し、現在までの研究成果を公開した。
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