本研究は、東南アジア大陸部の一角にあるカンボジアの人々の宗教生活を、制度と実践の両面に配慮し、かっ1970年代以来の歴史的経験と、国内外に広がるネットワークに注目して調査する。初年度にあたる平成21年度は、国境域のカンボジア人僧侶・仏教徒のネットワーキングの実態を解明するため、タイ東北部スリン県を二度にわたって訪問し、越境して同地域の寺院に止住していたカンボジア人僧侶に聞き取り調査を行なった。スリン県での調査では、ベトナム領のメコンデルタの、カンプチアクラオムと呼ばれる地域出身のカンボジア人仏教僧にも遭遇し、聞き取り調査を行なった。また、カンボジア国内での寺院の広域調査は、分担者となっている別の科研の資金をもちいて実施することができた。 平成21年度は、カンボジア国内農村部、国境域、隣接国というカンボジア人仏教徒の活動の場へ多面的にアプローチすることができた。以上から、カンボジア仏教の総合的研究のための基本的構図を立ち上げることができたことが、最大の成果である。
|