本研究は、東南アジア大陸部のインドシナ半島に位置するカンボジアの人々の今日の仏教実践のダイナミズムとその歴史的背景を解明することを目的とし、現地調査を実施した。 カンボジアは、1975~79年に民主カンプチア政権のもとで、極端な全体主義的な支配を経験した。人々が日常的に営んでいた仏教実践も、宗教信仰の否定を掲げた同政権の下で断絶を余儀なくされた。民主カンプチア政権が崩壊した後、コミュニティにおける人々の生活の一部として、仏教実践は直ちに再開した。また、上座仏教徒としての人々の実践に関わる国家制度も再び整備されてきた。本研究は、カンボジアの農村部の寺院とコミュニティにおける現地調査と、宗教省などでの聞き取りによって得た資料にもとづき、1979年以降のカンボジア仏教の再生の過程を、制度と実践の両面から、さらに人々の仏教活動を支えるヒトとモノとカネの流れとネットワークに注目して解明した。 本研究の最終年である平成24年度は、これまでカンボジアの農村で実施した現地調査を補足するため、短期の調査を2度行った。さらに、一連の現地調査で得たデータの整理と分析を進め、特にカンボジア農村にみられる仏教関連施設の種類と形成過程に関する論考を、査読付きの研究論文としてまとめた。さらに、9月にアメリカの北イリノイ大学でおこなわれたカンボジア研究の国際学会に出席し、現代のカンボジア人男性の出家行動と出家後の移動行為の特徴に関して発表を行った。
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