本年度は、9月にタイに出張し、北タイ・チェンマイ郊外にあるニローターラーム尼僧院の尼僧院長および主要な比丘尼たちに対し、インタヴュー調査を行った。この尼僧院は、現在タイで近隣住民から最も支持を受けている比丘尼・沙弥尼たちの尼僧院のひとつである。タイでは、比丘尼受戒に関心のあるメーチーや在家女性が外国のサンガによって単身で沙弥尼出家・比丘尼受戒する例が多く、ニローターラーム尼僧院のように、一つの尼僧院のメーチーたちが揃って沙弥尼・比丘尼となるケースは極めて少ない。ニローターラームの事例は、比丘尼サンガ復興と定着を実現したスリランカのケースと、いくつかの共通点を見出すことができた。こうした視点を元に、12月、ベトナムで開催された第11回サキャディーター国際女性仏教徒会議にて、研究発表を行った。また、ベトナムでのサキャディーター会議で見られた女性仏教徒の国際交流・ネットワークに関する記事を『中外日報』誌に寄稿した。さらに本年度には、すでに行った関連研究の調査成果に基づき、タイおよびスリランカにおける比丘尼サンガ復興運動についての論文を執筆し、それらが刊行されるに至った。また、タイ・サンガの華宗には「比丘尼」は存在しないものの、仏教と道教が混交したタイ華人の宗教施設において「比丘尼」と名乗る女性出家者が存在することがわかった。タイ華人比丘尼の存在は、今後新たな研究の可能性があると考えられるため、関連施設において予備的な調査を行い、その調査報告を執筆・刊行した。
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