研究課題/領域番号 |
21710265
|
研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
松川 恭子 奈良大学, 社会学部, 准教授 (00379223)
|
キーワード | 文化人類学 / インド・ゴア州 / 大衆演劇 / ティアトル / ネーション / 大衆文化 / 地域的想像力 |
研究概要 |
本研究は、19世紀~現在のインドにおけるナショナルな大衆文化の系譜のなかに、西部インド・ゴア社会の大衆演劇ティアトルの発生と展開を位置づけ、新たな大衆文化と想像力の形が、地域社会の再編に果たしてきた役割を明らかにすることを目的とする。 本年度は、初年度から実施している、19世紀末の都市状況と演劇・映画産業の状況を把握するための文献レビューを継続するとともに、これまでの2年間で収集したデータを取りまとめる作業を行った。文献レビューを行った結果、以下2点が明らかになった。(1)19世紀末に、インドの各地で西洋演劇とインドの民俗芸能の出合いが起こり、ティアトルも同様の流れに位置づけられること、(2)20世紀に入ってからの映画産業において、ゴア人ミュージシャンが大きな役割を果たし、それがティアトルの発展と関係していること。成果のうち、『Contact Zone』掲載の論文では、演劇ティアトルが上演されるゴアの村落における社会関係、コムニダーデ・システムの変化について論じた。文化人類学会での発表では、ティアトルがプリント・メディア、CDやDVD、電子メディア等、時代の変遷とともに複数メディアと関係しながら、それ自体がひとつのメディアとして成立している状況を提示した。特に、ゴア社会の問題をゴア外部に居住する人々の間で共有する、ティアトルのメディアとしての機能に着目した。また、これまでに撮影したティアトル関係者のインタビュー映像の整理を映像編集ソフトを使用して行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年9月から産前産後休暇及び育児休暇を取得したため。また、4月~8月の期間は、妊娠中のため、予定していたムンバイ(ボンベイ)でのフィールドワークを実施できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画において、本課題で明らかにすべき事項として挙げたのは、以下の三点である。(1)インドにおける大衆文化の新しい形式がネーション意識の発生に果たした役割、(2)大衆演劇ティアトルにおけるゴア社会に特有の地域的想像力の展開、(3)グローバル公共圏におけるティアトルの位置づけ。今後は、特に事項(2)について、1950~1980年のムンバイ(ボンベイ)でのティアトル公演の実態を、ベテラン俳優たちへのインタビューを通じて明らかにする。
|