子どもの性暴力被害の問題は、かねてから心理臨床や児童福祉の現場において地道な取り組みがなされており、民間や行政のレベルで、支援や実態調査が進められてきたが、性暴力は社会の偏見や無理解も大きく、被害にあった子どもや保護者を責めるというような二次被害も依然、頻繁に起きているのが実情である。 さらに、性暴力に関する取り組みとして、被害者への支援以上に立ち遅れている分野が、性暴力を含む性問題行動をとった子どもへの治療教育的な取り組みである。加害少年への対処は、有効な臨床的介入がされていないどころか、しばしば子どもの行動であるからと綾小化され、適切な対応がされないままであることが多い。こうした不適切な対応は、社会のジェンダー規範を強く反映しており、まさに社会の価値観を問うことなしに、教育や治療の有効性を検討することは不可欠である。 本研究では、海外で実施されエビデンスが証明されているプログラムを参照しつつ、日本の文化や状況にあわせたプログラム開発を行うことを目的として行われた。 初年度の成果として、まず、被害者支援のための具体的なツールを開発した。被害児童の支援に関わる支援者とのネットワーキングを行い、「はなしてくれてありがとう」という心理教育リーフレットを作成し、児童相談所等への配布・研修を実施した。 また、性加害行動への治療教育として、ある支援高等学校をモデル校とし、性問題行動をもつ生徒への個別プログラム実施のための体制作りを行った。結果、5名の男女生徒に対して継続的なプログラムを開発・施行した。プログラムを実施する教職員とのカンファレンスを定期的に開催し、地域資源との連携をはかった。また、実践例を文書化した。
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