研究課題
子どもの性暴力被害は、心的な外傷のみならず発達全般に大きな影響を及ぼしうる問題であり、早期の適切な介入支援が求められる。また、被害者と加害者がともに子どもの場合、学校や地域は双方への対応と両者の回復のための効果的な介入を行う必要がある。昨年度に開発した被害児童のための心理教育用教材『はなしてくれてありがとう』を用いた学校教員および児童福祉施設職員向け研修を行い、教職員の性暴力対応に関する認識の質問紙調査を実施した。高等学校の教員64名を対象とした質問紙調査の結果から、教員が関与した生徒の性問題行動は、男子生徒については性的接触を伴う性加害行動が多く、女子生徒は性暴力やデートDVなどの性被害が多いことが示された。また、指導において困難さを感じる教員が多い一方で、学校での対応の必要性が強く認識されていることが明らかになり、性問題行動の研修等のニーズの高さが示された。また、昨年度に引き続き、ある支援学校高等部をモデル校として性問題行動をもつ生徒への個別プログラムの実施および全体への性教育の体制づくりを行った。月1回程度のケース会議のほか、年に2回の教職員研修を行い、性加害と性被害へ対応する際のスキル構築を目ざした。1年間の取り組みについては、「知的障がいのある生徒のための性教育研究『問題となる性行動を有する生徒への支援に関する取り組み』報告書II」にまとめ、全国の支援施設に配布し、学校からの問い合わせや相談に応じた。日本ではまだ性問題行動からの回復支援に関する研究が十分ではないため、11月にアメリカ合衆国アリゾナ州ツーソンにある治療共同体アミティへの視察研修を受け、さまざまな問題からの回復のための支援スキルおよび教材に関する聞き取り調査を行った。これらの結果は今後の研究に反映させていく予定である。
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学校危機とメンタルケア
巻: vol.3 ページ: 76-87
心理臨床の広場
巻: Vol.3, No.2 ページ: 24-25
伝えたい・学びたいHIVカウンセリング
巻: Vol.3 ページ: 29-33