子どもの性暴力被害は、心的な外傷のみならず発達全般に大きな影響を及ぼしうる問題であり、早期の適切な介入支援が求められる。また、被害者と加害者がともに子どもの場合、学校や地域は双方への対応と両者の回復のための効果的な介入を行う必要がある。 これまでに開発した被害児童のための心理教育用教材『はなしてくれてありがとう』に続き、被害児童の保護者や教職員向けの心理教育教材『子どもを支えるためにできること』を作成し、それらを使った教職員、児童福祉施設等の職員等を対象とした研修を行った。 また、調査協力校である支援学校をモデル校として、性問題行動をもつ生徒への個別プログラムの実施および全体への性教育の体制づくりを行った。月1回程度のケース会議のほか、年に2回の教職員研修を行い、性加害と性被害へ対応する際のスキル構築を目ざした。1年間の取り組みについては、「知的障がいのある生徒のための性教育研究『問題となる性行動を有する生徒への支援に関する取り組み』報告書III」にまとめ、全国の支援施設に配布し、学校からの問い合わせや相談に応じた。また、フィールドワークをもとに、校内体制づくりや学校現場における性教育の実践の留意点等について論文化を行った。 日本ではまだ性暴力によるトラウマへの専門的支援や性問題行動からの回復支援に関する研究が十分ではないため、7月に米国CARE Sinstitute等においてTF-CBT(トラウマ焦点化認知行動療法)に関する研修の受講および資料収集に行き、11月にカナダで開催された第30回治療教育学会へ参加し、新たな知見を得るとともに諸外国の研究者との情報交換等を行った。
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