今年度は、主として女性労働者の就業の継続に関する先行研究レビューを中心とした文献研究と、次年度以降の本調査に向けた予備的な聞き取り調査を行った。文献研究の結果として、キャリア形成、人的・社会的資源の蓄積、技術・技能獲得の面で就業の継続がきわめて重要であることが確認されたうえで、女性の就業の継続の困難に関して次の2つが明らかとなった。 (1) 女性の就業の継続の主たる困難として挙げられているのは、出産・育児、要介護者の有無である。 (2) (1)に加えて近来、女性労働者の非正規雇用化が進行し(例えば若年女性労働者の非正規化ならびに派遣労働の規制緩和等にともなう長時間働く女性の非正規化)、女性労働者の就業の継続は一層困難になっている。 この2点を踏まえて、長期就業継続中ならびに長期就業継続経験のある保育士・看護師・販売員などの女性に簡単な聞き取り調査を行った結果、勤続を長期化するうえで、育児休業・介護休業のような制度的要素の影響の大きいことが確かめられた。またあわせて保育・介護体制の確立が必要であることが示された。ただし調査対象者の多くが制度的支援の充実している女性労働者中心の職場で働いており、かつ制度的な恩恵の受けやすい正社員などの職務・雇用区分にあった。今後は本調査に向けて制度的な面での支援を受けにくい長期就業継続者を中心に聞き取り調査を継続実施するとともに、就業の継続と職場内外における女性どうしのつながりとの関連について検討する。
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