前年度は、主として女性労働者の就業の継続に関する先行研究を中心とした文献研究と、次年度以降の本調査に向けた予備的な聞き取り調査を行った。文献研究の結果として、キャリア形成、人的・社会的資源の蓄積、技術・技能獲得の面で、就業の継続がきわめて重要であることが確認された。そのうえで、女性の就業の継続の困難に関して、これまで指摘されていた出産、育児、要介護者の有無といった事情による就業の中断だけでなく、近来においては非正規雇用化の進行等によって女性労働者の就業継続はいっそう困難であることが明らかとなった。 この結果をふまえ、長期就業継続中ならびに長期就業継続経験のある保育士・看護師・販売員などの女性に予備的な聞き取りを行った。勤続を長期化するうえで、育児休業・介護休業のような制度的要素の影響の大きさが確かめられ、保育・介護体制の確立が必要であることが示された。ただし調査対象者の多くが制度的支援の充実している女性労働者中心の職場で働いており、かつ制度的な恩恵の受けやすい正社員などの職務・雇用区分にあり、制度的な面での支援を受けにくい労働者の実情はわからなかった。 今年度は産前産後の休暇および育児休業による研究の中断後、2ヶ月間の期間中に、研究中断前におこなった文献研究を継続した。来年度の本調査につなげる形で、就業の継続と職場内外における女性どうしのつながりとの関連について検討した。今後は、これまでの文献調査結果と、前年度の予備調査の結果をふまえつつ、とりわけ制度的な面で恩恵の少ない職場・職務について調査を行う予定である。
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