本研究の目的は、女性の職場・職業定着に対し、労働現場における女性同士のインフォーマルな「仲間」の関係性が、どのように機能しているかを明らかし、これを新たな「つながり」として展開するための基盤を見いだすことであった。そのため、最終年度にあたる本年度は(1)前年度までに行った調査の整理と補足調査、(2)(1)の分析作業と研究会・学会での発表を行った。以下に具体的な成果を示す。 (1)これまでに収集した資料ならびに女性労働者、人事担当者、男女共同参画推進施策担当者への聞き取り調査のデータを整理した。そして育児休業・介護休業といった制度的恩恵を受けにくいと考えられる中小企業の女性労働者、および非正規雇用者の事例を収集するため、介護サービス業の非正規労働者、中小規模の製造業経営者への聞き取り調査を追加実施した。そのなかで、企業規模および正規・非正規といった雇用形態の違いにかかわらず、長期間に就業継続した女性労働者が多いこと、そこから管理職に登用された女性がいること、そうした女性同士での交流のあること、さらにはそれらが従業員に周知されていることが、女性労働者の技術習得や就業意欲、就業期間に影響を与えるという事例が見いだせた。ここから女性の職場定着に対し、労働現場においてロールモデルとなる女性従業者を中心とした、女性同士の「つながり」の有無が重要性を持ちうることを認識することができた。 (2)前年度ならびに本年度行った聞き取り調査の分析を行った。ここで得られた知見の一部について感情労働の概念を参照しつつ、「感情労働の『他律性』と『自律性』」として文化人類学会、関西相対研究会で報告した。今後さらに国際学会での発表を計画しており、成果の海外発信に努めていく。
|