本研究の目的は、「多子社会」・沖縄で増加する国際結婚と変容する家族の再生産の諸相を解明し、そのジェンダー的含意を探究することである。目的達成のために、今年度は、沖縄の中でも特に高出生力を示す宮古島市と多良間村の(1)人口・結婚・出生動向、社会経済構造及び家族規範の把握、(2)沖縄男性とアジア移住女性との国際結婚の動向と移住女性をとりまく社会状況の理解を試みた。具体的には、第一に、沖縄県立図書館宮古分館で宮古島の人口と家族、国際結婚に関する統計・文献資料を収集した。第二に、宮古島市役所企画政策部で『統計みやこじま』と『宮古の子・育成プラン』の収集、関連統計資料の確認、今後の調査協力依頼を行った。第三に、宮古福祉保健所で宮古島市と多良間村における母子保健と人口関連資料『宮古福祉保健所概要』を収集し、地域保健班長と保健師から宮古島の国際結婚と国際児の生活状況情報を収集した。 今年度得られた主な知見は以下の通りである。宮古島では離婚率と未婚率が高く、30~40代男性で高水準かつ上昇傾向にある。20~40代の生産年齢人口が少なく、30代から60代前半まで男性人口が女性を上回り、男性の「結婚難」が潜在化している。外国籍の女性配偶者は約170名いる。国籍別ではフィリピン人女性が最多であるが近年は減少傾向にあり、ベトナム人女性が増加している。ベトナム人女性は斡旋業者を介して沖縄男性と結婚し、高齢化が顕著な城辺地区や多良間村に集住している。なお、宮古島市の相対的に高い出生率(TFR1.95前後)は、外国籍の女性配偶者数が増加し始めた2006年頃から上昇傾向にある。これらの知見から、現代沖縄の家族と出生力研究において方法論的ナショナリズムを相対化し、再生産領域のグローバル化とそこで展開する家族再生産の政治をジェンダーとエスニシティの視点から分析することの重要性を確認した。
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