本研究の目的は、多子社会・沖縄の国際結婚と家族の再生産の諸相を解明し、そのジェンダー的含意を探究することである。今年度は前年調査を継続しつつ、宮古島で(1)沖縄男性と国際結婚したアジア移住女性の社会状況把握、(2)移住女性の結婚・出産・家族の再生産をめぐる意識・行動の聞取り調査を開始した。具体的にはまず、宮古島市役所市民生活課で外国籍人口の最新統計を収集した。次に、移住女性の社会状況について、行政(市役所児童家庭課、働く女性の家、保健センター等)と民間団体(婦人連合会、診療所、教会等)、個人(新聞記者、日本語教員、母推、保健師等)にヒアリングした。最後に、沖縄男性と結婚したフィリピンとベトナム女性各1名に聞取り調査を行った。 今年度の主な知見は以下の通りである。宮古島の外国籍女性配偶者の多くはアジア出身で、フィリピンが最多、ベトナムが一定数を保持している。前者は市街地と下地、後者は城辺と多良間村に集住する。フィリピン人とベトナム人とでは国際結婚の経緯や宮古島での生活状況は異なる。フィリピン人は宮古島居住歴が長く結婚経緯も多様であり、比較的年長で社会的ネットワークがある。一方、ベトナム人は斡旋業者を介して国際結婚し、若年層が多く社会的ネットワークもない。両者共に家庭・社会生活上の問題に直面しているが、「宮古の花嫁、宮古の子ども」という言説に包摂され、移住女性への行政の状況把握や取組、民間の社会的支援はほぼ皆無である。今年度までの研究成果をまとめた論文は現在執筆中、韓国の少子化・国際結婚・多文化家族をめぐる法制度、及び台湾の男児優勢な出生力と国際結婚に関する関連論文を発表した。 次年度は、宮古島の国際結婚と移住女性の社会状況、沖縄で鬩ぎ合う家族と移住女性の再生産戦略をジェンダーの視点から考察すべく、フィリピンとベトナム女性配偶者を対象に体系的な聞取り調査(調査票調査含)を実施する。
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