本研究の目的は、沖縄における家族再生産の最新局面として国際結婚の様相を捉え、そのジェンダー的含意を探究することである。今年度は前年調査を継続しつつ、主に多良間村で(1)沖縄男性と国際結婚したアジア移住女性の社会状況把握、(2)移住女性の結婚・出産の意識・行動の聞取り調査を実施した。具体的には、多良間村で村役場担当部署のヒアリングとアジア移住女性の聞取り調査を行い、4種の統計・文書・口述資料-(1)人口統計(人口構造と婚姻・出生動向)、(2)アジア移住女性との国際結婚の動向(国籍別の移住女性数や世帯数の時系列的データ)、(3)国際結婚したアジア移住女性の社会的位置づけ(女性や子どもへの社会的支援)、(4)多良間村のフィリピン人女性9名とベトナム人女性2名の聞取り内容(女性と夫の社会的属性、結婚の経緯等)-を収集した。 これにより、多良間村のアジア移住女性と現地男性との結婚、彼女たちの社会・家庭での位置づけ、商業化された国際結婚のジェンダー化された過程を把握した。具体的には、多良間におけるアジア移住女性との家族形成の歴史とともに、数としてはフィリピンが多く、ベトナムも一定数いることがわかった。フィリピン人は、多良間居住歴が長く結婚経緯も相対的に多様であり、アルバイトやパート就労などを通じてフィリピン人同士の社会的ネットワークを形成している。他方、ベトナム人は全て斡旋業者を介した結婚であり、若年層でネットワークもほとんどない。両者とも宮古島市の状況と比すると、相対的に貧しく、家庭内及び社会生活上の困難・問題に直面している。しかし、行政の状況把握や支援、他の社会的支援はほぼ皆無である。今年度までの研究成果として、彼女たちと夫の社会的属性や生活状況、商業的斡旋を介した多良間入り、出国時の前借金の存在等、婚姻過程で移住女性が自律性を奪われる回路を分析中した論文を現在執筆中である。
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