2009年度の本研究は、ルヌーヴィエのカテゴリー論ならびに、ルヌーヴィエが主宰した雑誌、Revue philosophiqueの収集と読解を中心に進められた。 1)ルヌーヴィエのカテゴリー論については、彼の『論理学』『心理学』の読解を中心に遂行し、カントのカテゴリー論を換骨奪胎しつつ、自然科学・社会科学両面をカバーする形でのカテゴリー論が形成されるプロセスを追跡した。即ち、自然科学のみならず、社会的諸学をも統括するものとしてのカテゴリーというルヌーヴィエの理念を明らかにすると同時に、この理念の形成における実証主義の影響などにも考察を加えた。この成果は、2009年12月に開催された北海道哲学会の例会で発表され、来年度の同会の会誌に掲載されることとなっている。また、カントのカテゴリー論からデュルケムのカテゴリー論に至る流れの中に、ルヌーヴィエのカテゴリー論を位置づけ紹介することで、ルヌーヴィエのカテゴリー論の歴史的意義を明らかにした論考「シャルル・ルヌーヴィエカントとデュルケムの間で」が、『創文』第526号(2009年12月)に掲載された。 2)ルヌーヴィエの時事的論考を読解することで、彼の理論哲学と社会哲学の関係を理解するために、彼が主宰した雑誌Revue Philosophiqueの重要論文を読解した(本雑誌は、小樽商科大学図書館手塚文庫に所蔵)。これらの読解を通じて、上記の課題の研究を進めると同時に、ルヌーヴィエの未開社会論の重要性を巡る論考などをまとめることとなった。これらの成果は、2010年度以降に発表する諸論文に反映される予定である。
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