研究課題/領域番号 |
21720013
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中 真生 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (00401159)
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キーワード | 苦しみ / 身体 / レヴィナス |
研究概要 |
本研究は、倫理学の研究の中でも、善や正義、愛など積極的な側面ではなく、いわばそうした光に対する影の部分、人間存在の負のあり方に焦点を当て、それをとりわけ苦しみや悪という主題から明らかにしようとするものである。その際とくに「身体」を考察の軸とし、土台とすることによって、人間存在の負の側面を、それを被っている個々の人間に沿って、しかもここの差異を捨象することなく、ありのままに浮かび上がらせることを目指している。 本研究のそのような研究計画のうち、本年度はとくに「女性」をめぐる苦しみと身体という主題に的を絞り、研究を進めた。2010年に発表した、「初期レヴィナスにおける『女性的なもの』と『存在のエコノミー』」という論文ですでに、レヴィナスの概念のひとつである「女性的なもの」の位置づけとその果たす役割を、彼の初期の思想にかぎって考察したが、本年度はそれを基に、レヴィナスの思想全体における「女性的なもの」の位置づけや意義、そしてその重要な変遷について、身体性との関連から考察した。またレヴィナスの「女性的なもの」や、それと関連する家族や家にかかわる諸概念は、ユダヤ思想の影響を多く受けているが、そうしたユダヤ思想との関係を視野に入れた、レヴィナスの思想における女性的なものについての研究を、身体の観点に重点をおきつつ行い、2011年12月に京都ユダヤ思想学会主催で行われる「レヴィナス記念シンポジウム-ユダヤ思想とレヴィナス哲学-」で発表する予定である。 このような研究は、本年度はレヴィナス思想にかぎって行ったものの、今後、哲学や倫理学において、女性や、ケアなど女性的とみなされているものについて、とくに身体や苦しみとの関連で、広く学際的に考察していく上での足がかりになるだろう点で意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レヴィナス思想を超えて広く苦しみと身体について考察する理論的研究に関して、とくに女性をめぐる主題についての足がかりは得られたものの、まだ本格的に踏みこむには至っていない。また実践的研究の計画の具体化や環境づくりが遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
まず理論的研究において本年度進めてきた、女性をめぐる苦しみと身体について、レヴィナス思想にとどまらず、ジェンダー論や生命・医療倫理の領域に踏み込んだ研究を行うことで、理論的研究の射程を広げると同時に、生殖医療に関する実践的研究の具体化をはかる。それと並行して、メルロ=ポンティをはじめとする現象学における身体性についての研究を進め、文献的、実践的両方向からの、苦しみと身体についての倫理学研究の理論的基盤を固める。
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