研究概要 |
昨年度までは主に原典研究に取り組んできたが,今年度は,これまでの研究の総括を兼ねて思想研究に集中的に取り組んだ。具体的には,ジャイナ教論理学,特にアカランカの思想について考察した。その際仏教論理学との比較という視点も導入したが,その成果は論文「ジャイナ教徒による刹那滅論批判」としてまとめ,記念論集に寄稿した。本論稿においては,ジャイナ教徒による刹那滅論批判は,ジャイナ教自身の主張する多面性論証といかなる関係にあるのか,仏教徒ドゥルヴェーカミシュラの紹介するジャイナ教説とアカランカの刹那滅論批判にはどのような共通点および相違点があるのか等の問題について明らかにした。 2011年8月には,ジャイナ教論理学関連の写本・文献資料の調査のため,インド・アーメダバード大学およびL.D.研究所を訪れた。アーメダバードでは,アカランカ研究の第一人者であるナギン・J・シャー博士との面会を果たし,ジャイナ教論理学について,またアカランカの著作に関して意見交換し,学術交流の機会をもつことができた。アーメダバード近郊のパタンを訪問した際には,ジャイナ教寺院に隣接する図書館において,種々の写本の電子データを閲覧および入手することができた。その他,仏教論理学関連の成果として,以前に執筆した2つの論文"Remarks on the origin of all inclusive pervasion"と"antarvyapti and bahirvyapti re-examined"(Religion and Logic in Buddhist Philosophical Analysisに収録)が今年度出版の運びとなった。またサーンキヤ学派のテキストの翻訳研究である共著論文「Yuktidipika 87,18-91,17(ad SK 6ab)和訳と注解」が出版された。
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