研究課題/領域番号 |
21720019
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北田 信 大阪大学, 世界言語研究センター, 講師 (60508513)
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キーワード | 新期インド・アーリア語 / 民族音楽 / ベンガル語 / 仏教タントラ / ネワール / インド・ネパール / 国際情報交換 |
研究概要 |
2011年8月にドイツを訪れ、ハレ大学ダス教授、ハイデルベルク大学ハーダー教授と本研究に関する意見交換を行った。 9月にインドのデリー・アーグラー(マトゥラー、ヴリンダーヴァン)など、新期インド・アーリア語の初期の文学の発生に関わりの深い土地を調査し、さらに西ベンガル州ビボルダ村において、口承伝統の調査を行った。 ベンガル語最古の形を保存する『チャリャーギーティコーシャ』が作られた同時期の13世紀、デリーの詩人アミール・ボスロウはヒンディー語の最初の韻文を作ったとされる。今日でもデリーのニザームッディーン・アウリヤー廟の境内にある彼の墓所の前では、彼の作とされる詩がカッワールと呼ばれる音楽家たちによって歌われている。また、ヴリンダーヴァンで話されるブラジ語を用いたヴィシュヌ派の宗教文学は、ベンガル語・ミティラー語の古典文学形成に強い影響を及ぼした。インド東部での新期インド・アーリア語による新興の文芸潮流は、カトマンドゥ盆地のネワール王朝におけるベンガル語・ミティラー語・ネワール語を用いた文芸活動と間接的・直接的に連動している。 このように、『チャリャーパダ』は、南アジアの北半分のさまざまな地域で新期インド・アーリア語による文芸が新しく誕生し、盛んになった現象の一つの表れであり、同時代の南アジア全体のなかでとらえていく必要があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献研究を進めるとともに、現地調査を行い、その際、現地の口承と文字資料の両方を調査することにより、ほぼ計画通り、口承と写本を相補的に研究できている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでどおり、ネパール・インド東部に重点を置いて、文献研究・現地調査を行う。ただ、23年度の現地調査の結果、ウルドゥー語やパンジャービー語などを用いたムスリムの文芸にも、アパプランシャの文芸から受け継いだと思われる南アジアの土着的な要素が思ったより豊富に残っている、ということが判明したため、新期インド・アーリア語によるムスリム文芸をも研究対象に含める可能性がある。
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