本年度は、昨年度までの資料収集調査に引き続き、英国において社会主義以前のモンゴルにおけるキリスト教伝道に関する資料収集を行った。 ケンブリッジ大学図書館聖書協会アーカイブでは、主に英国外国聖書協会が行っていたモンゴル語訳聖書の翻訳事業に関する記録を収集した。また、ロンドン大学東洋アフリカ学院図書館世界宣教会議アーカイブでは、ロンドン宣教協会が行っていた社会主義以前のモンゴルにおける宣教事業に関連する書簡・ジャーナル等の資料を収集した。宣教初期における宣教師によるモンゴル文化の理解や、そのような理解が聖書翻訳に与えた影響など、宣教初期の異文化接触、異教理解に関連する貴重な資料を入手することができた。また、モンゴルにおける宣教師の書簡やジャーナルに対するイギリス本土での反応など、当時の本国宣教拠点が僻地宣教をどのように捉えていたかを示す資料も入手することができた。 以上のような社会主義以前の文献資料の比較や分析を通して、19世紀のイギリス本国におけるモンゴル宣教の位置づけや、それが後の宣教事業、聖書翻訳事業に与えた影響について明らかとなった。また、昨年度までの研究成果と合わせて、社会主義以前と社会主義崩壊以後の資料を比較することによって、宣教師とモンゴル住民とのあいだの接触様態の変化が、聖書翻訳や教義、宣教論をめぐる議論などと具体的にどのように関係しているかが明らかとなった。
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