本年度の研究成果としては、中西牛郎に関する論文を2本を投稿し、研究会における報告を1回行った。まず"Reconfiguring Buddhism as a Religion:Nakanishi Ushiro and His Shin Bukkyo"を Japanese Religions誌に投稿した。これは、英語圏の近代日本仏教史/宗教史研究においてほとんど中西が取り上げられていないことを鑑み、中西の仏教改良運動について概観した論文である。仏教を(西洋的な)宗教についての知識をもとに改良しようとした側面に焦点を合わせて論じた。次に「明治中期における「仏教」と「信仰」-中西牛郎の「新仏教」論を中心に-」を『宗教学論集』に投稿した、これは2009年6月に駒沢宗教学研究会において報告した「明治中期仏教改革論の位相-中西牛郎による「新仏教」の構想を中心に」を下敷きとするものであり、論文の後半では中西が同時代人にどのように読まれていたのかについて論じた。 『経世博議』のデジタル化に関しては、本年度は1~24号と号外についてマイクロフィルムの撮影を行い、デジタル化は次年度に行うこととした。マイクロフィルム化することによって資料保存の面でのメリットがあり、かつスムーズなデジタル化作業への移行が想定されるためである。 また計画通り9月と2月の2度に渡って熊本で調査を行った。紫溟会に関連する資料を中心に調査し、特に『紫溟新報』については中西の書いたと推定される宗教についての論説を確認することができた。それ以外にも未見資料を発見し、有益な調査となった。
|