本研究の目的は、「誰でもの祈り」としての高齢者・障がい者の聖地への旅行と、それを支える地域住民のボランタリズムから、「聖地らしさ(オーセンティシティ)」の現代的な多様性を宗教学の立場から明らかにすることである。3年計画の一年目にあたる平成21年度は、1、歴史的な高齢者・障がい者の聖地への旅行と、その意味に関する分析と、2、日本国内の代表的な聖地における高齢者・障がい者の旅行に関する現状調査を中心に以下の通り実績をあげることができた。 1では、宗教と福祉研究関係や、高齢者・障がい者の旅行研究関係の図書および資料を収集し、歴史的な事実から分析を行った。その成果として、歴史的な高齢者・障がい者の伊勢参宮における「施行」から、現代的な参拝ボランティアとの連続性・非連続性を明らかにできた。また、近年の行政施策からも伝統的な「支え合い」の脈絡を考察する視座を設定できた。(学会発表4件、雑誌論文2件)。 2では、世界遺産に登録されているなど著名な宗教観光地より研究対象を絞り、それぞれのバリアフリーに関わる対応内容を把握するためにアンケート調査の作業に着手した。その成果として、NPO法人伊勢志摩バリアフリーツアーセンターの利用者500人を対象に「高齢者・障がい者の聖地旅行とそれを支えるボランティアに関する調査」を実施し、153通の回答を得た(回収率31%)。 さらに、関連する成果として、『社会貢献する宗教』(世界思想社、2009)で、宗教と福祉に関する文献解題をまとめることができた。
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