1、当該時期の記録(日記)類における神社・神祇関係記事の調査 中世後期から近世初頭における吉田家及び同家との交流が認められる公家の記録等を収集し、それらにおける神社や神祇に関する記述の調査を行った。とりわけ、織豊期における吉田家の当主であり、その後の近世における吉田神道の隆盛の基盤を築いた吉田兼見の日記『兼見卿記』及びその実弟であり同じく吉田神道の普及に尽力した僧・梵舜の日記『舜旧記』に対しては重点的に精査を行い、諸国の神社及び神社縁起・神祇書関係記事の整理・データベース化を進めている。 2、天理大学附属天理図書館における吉田文庫神社関係資料調査 基礎的作業として天理大学附属天理図書館吉田文庫所蔵資料の目録『吉田文庫神道書目録』における諸国神社関係資料項目を整理してデータベース化を行い、各資料の成立年代や性質、書写者等による分類を試み、その性格や伝来にいたる歴史的背景などの全体像把握に努めた。以上の成果をもとに天理図書館において資料調査2回を実施し、同家が作成・収集・襲蔵した諸国神社関係資料400余点の閲覧・調査を行った。加えて調査報告書(吉田文庫諸国神社関係資料の奥書・識語集成)作成のため、特に重要と考えられる資料の複写取得や必要情報等の書写を進めている。 3、調査による成果の分析 吉田家における神祇書作成の背景となっていると考えられる同家と諸国神社との「知のネットワーク」 の実体解明のため、現在、上記1・2の調査における成果をもとに、吉田家関係記録に看取される神社関係記事と、吉田文庫所蔵の諸国神社関係資料との関係についての分析を進めている。
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