研究概要 |
本研究は、現在アメリカで活躍する女性イスラーム教徒(ムスリム)のクルアーン解釈に焦点を当てることを目的としたものである。そこでまず、アフリカ系(黒人)のアミーナ・ワドゥードAmina Wadud(1952-)による『クルアーンと女性:女性の視点から聖なるテクストを再読するQur'an and Woman : Rereading the Sacred Text from a Woman's Perspective』(1992,1999)を比較の中心にすえた。そしてこの解釈の比較対象として、バルラスやバラザンギといったアメリカ在住の女性のクルアーン解釈者に加え、ビラール・フィリップスやファリド・イサックといったアメリカで注目される男性のクルアーン解釈者も含めた。 初年度は女性解釈者たちが、何をクルアーン解釈を必要とする問題の場としているのかを解明することを念頭に、文献の収集・精読・分析を行った。アメリカに出張し、現地ムスリムのインタビューや資料収集も行った。 次年度はさらにアメリカにおけるクルアーン解釈の状況の概観を得るため、フィリップスやイサックの文献に注目し始め、資料収集・精読・分析を行い、女性解釈者たちと比較した。またロンドン大学SOASで開催されたThe Qur'an : Text, Society & Culture学会に参加し、さらにロンドン中心地と郊外のムスリム地区2か所の視察を行った。同時に関連資料収集も積極的に継続し、文献のみならずウェブ上の情報収集も進みつつある。 最終年度は、全体の総括として、アメリカのクルアーン解釈の領域において、クルアーン解釈者の権威が伝統的なものから変化していることを指摘する成果を出すことができた。日本ではオリエント学会(於東海大学)において「クルアーン解釈者の権威-古典期から現代への変遷」の発表をし、Orientで論文"Contemporary Muslim Intellectuals who Publish Tafsir Works in English : The Authority of Interpreters of the Qur'an"が掲載された。またアメリカとエジプトへの出張も行い、調査を行った。
|