写真と歴史のアクチュアリティを巡る本研究は、われわれ写真の観者にとって写真イメージをとおして経験される痛みというものが、歴史がわれわれに到来する重要な契機となりうることを明らかにした。まず本研究を遂行するための研究計画に基づき、ヴァルター・ベンヤミンやエドゥアルド・カダヴァら思想家の案出した概念を用いて、歴史のアクチュアリティがいかにわれわれに触れに来るかを分析するためのフレームワークを構築した。さらに、こうした概念を手掛かりとして用いて写真分析をおこない、写真における歴史のアクチュアリティの到来を検証した。本研究の最終年度には、写真イメージを通して歴史のアクチュアリティが到来するのは、写真が歴史のモメントを〈描く〉のではなく生き生きと〈経験させる〉ことによってわれわれ観者を歴史的局面に触れさせるときであるという結論を得ることができた。
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