研究初年度である今年度は、主に明治~大正期の日本国内におけるイタリア・イメージの収集と分類にあたった。その際図像のみならずイタリアをめぐる言説も含め、イタリアにかかわる当時の様々な同時代情報ができる限り集積されるようつとめた。収集対象は主に(1)児童むけ雑誌、児童書、偉人伝等のなかで描かれてきた同時代イタリアの文物・著名人をめぐる表象と言説(2)明治以来日本で紹介されてきたイタリア児童文学の翻訳書とそれら作品についての評価、言説(現代まで多数の翻案・翻訳が出版されているエドモンド・デ・アミーチス『クオレ』を中心として)(3)当時の主要新聞各紙に掲載されたイタリア関連の報道記事および写真、等とした。それらに加え、当時刊行された単行書で同時代イタリアにかかわるものも可能な限り収集した。こうした調査は、それだけでは個々の断片的な情報にすぎないが、それぞれの資料を今後詳細に検討することによって、近代日本における異文化受容のケース・スタディとしての意義を見出せることと思う。また、そこにみられる日本のイタリアに対する関心・交流め蓄積は昭和戦前期、日伊両国が同盟関係を結んだ前後の時期に、両国の友好関係を演出する様々な視覚表象および言説のなかで大いに活用されたものと考えられる。そうした視点をベースに、今年度の収集に続き、来年度は昭和戦前期を対象として同様の資料収集をおこない、両年度の調査状況をふまえて明治~昭和戦前期までの日本におけるイタリア受容の諸相を総合的に検討し、論考をまとめる予定である。
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