本研究は、わが国の美術館では組織体としての記録管理や情報公開が十分に行われていないこと、機関アーカイブズ設置が進んでいないことなどをふまえ、日本における美術館アーカイブズのあり方を追求するものである。美術館アーカイブズの範囲として、本研究では美術館活動の設立経緯を示す文書や運営方針・事業遂行に関する文書、作品寄贈・購入文書、展覧会記録・会場写真、音声・映像資料、その他の業務文書に加え、美術館が外部に向けて発信。た資料である展覧会カタログなどの出版物、広報用資料、さらに美術館特有の資料として美術作品の画像・複製写真、一過性資料(新聞記事切抜き、小冊子、展覧会チラシ、絵はがきなどのエフェメラ)など広範な資料を対象とするが、これは欧米の美術館アーカイブズ(museum archives)がこれら多様な資料群を美術館図書館(museum hbrary)と一体となって整理公開しでいる状況を念頭においたものである。 平成21年度は、1)ドイツ民族博物館美術アーカイブ(ニュルンベルク)を視察し、自館資料とともに芸術家や美術館、画廊など、美術に関するアーカイブズの国家的収集センターとしての役割を担う同館の活動概要、検索手段について現地調査した。2)国際図書館連盟美術図書館分科会に参加、ウフィツィ美術館図書館、フィレンツェ美術史研究所画像アーカイブ、ハーバード大学イタリア・ルネサンス美術研究所(タッティ荘)を視察した。3)国立西洋美術館一過性資料(アーティスト・ファイル)の書誌情報の公開を開始した。海外の美術館の事例にならい、アイテム単位ではなくコレクション単位による情報提供の実地応用を試みた。4)国立西洋美術館記録映像(ビデオテープ)の整理作業に着手した。5)国文学研究資料館アーカイブズ・カレッジに参加、基礎理論の把握に努めるとともに東京大学史料編纂所、横浜開港資料館等施設見学に参加した。
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