本研究は鎌倉幕府が開かれてから古河に鎌倉府が移転するまでの13~14世紀を中心に、鎌倉文化圏における絵画の制作および流通、宋・元時代絵画の受容の諸相を明らかにしようとするものである。本年度は次のような調査、研究を主に行った。1.嘉元三年(1305)の年記を有する鎌倉・光明寺所蔵の「浄土五祖絵伝」をはじめ、1300年前後に鎌倉地方で制作されたと考えられる鎌倉派絵巻を中心に、今後の作品調査の対象となる絵画について美術全集、報告書等の刊行物から基礎的データを収集した。2.鎌倉幕府が開かれてから、鎌倉府が古河に移転するまでの期間に鎌倉文化圏において制作され、流通し、受容された絵画の情報を収集。現存する絵画作例のほか、称名寺所蔵唐物関係史料などの文献史料についてもデータを採録した。3.宋・元時代の羅漢図や、舶載画などを中心に東京、大阪等において作品調査をおこなった。4.中国製の羅漢図の特徴としてあげられる「生身」的な表現や実在する人物像を羅漢図に描き込む慣習が日本においてどのように理解されていたのかを報告した。(梅沢恵「羅漢図における「生身」性とその受容」『アジア遊学』122号、2009)5.東国における密教図像の伝播を日蓮自筆の図像の典拠を例に論じた。(梅沢恵「日蓮筆『不動愛染感見記』について」『鎌倉の日蓮聖人』(展覧会図録)神奈川県立歴史博物館、2009)
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