本研究は鎌倉幕府が開かれてから古河に鎌倉府が移転するまでの13~14世紀を中心に、鎌倉文化圏における絵画の制作および流通、宋・元時代絵画の受容の諸相を明らかにしようとするものである。 本年度は次の調査、研究を主に行った。(1)作品調査の成果を反映させ、ファイルメーカーで構築したデータベースを増補、拡充。(2)ひきつづき中世鎌倉文化圏での制作、流通がみとめられる諸作例について、美術全集、報告書や図録等の刊行物や所蔵先の写真資料などから採取できるデータ、画像をデータベースに入力した。(3)本研究に関連する諸作例について作品調査を行った。(4)中世の文献史料を中心に東国における絵画制作、流通に関する記事を収集した。(5)中世の鎌倉文化圏において制作された絵巻や掛幅縁起を主たるテーマとした展覧会の開催に向けた準備を進めた。(6)辟邪絵(国宝・平安~鎌倉時代)[毘沙門天]幅に描かれる毘沙門天の図像を手がかりに、大陸の特殊な毘沙門天図像と中世における絵巻制作の関係について考察した。弓矢を執る毘沙門天像は特殊な図像で、元となる図像は西域の毘沙門天信仰に求められる。兜跋毘沙門天など中国西域由来の図像は日本では仏画そのものとしては定着しなかったものの、その特殊性、説話性ゆえに絵巻の制作のイメージソースとなった事例と考えられる。成果の一部は国際シンポジウムで口頭発表し、特別展「天狗推参!」(神奈川県立歴史博物館、9/25~10/30)の展示および図録所収の論文でも一部報告した。
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