日本の朝鮮陶磁受容は、朝鮮総督府による全国古蹟調査等の植民地政策とほぼ時を同じくして高まった。朝鮮に住む日本人と日本の文化知識人を中心として朝鮮陶磁の収集と研究が急速に進められ、これは中国陶磁受容とともに日本近代の陶芸家の作品制作に大きな影響を与えることになった。そこで本調査研究では、調査研究、文化的評価、および陶芸家による作品研究の三つの側面から日本近代における朝鮮陶磁受容の新たな位置づけを行う。今年度の成果は以下のとおりである。 1. 日本近代における陶磁器を含む朝鮮美術受容は、柳宗悦を中心とした「民藝」運動の側面からのみ語られることが多かったが、朝鮮陶磁の日本国内への紹介は、朝鮮総督府による古蹟調査の報告や在朝日本人および国内の文化知識人との交流によって形成されていったところが大きい。そこで今年度は、韓国国立中央博物館、ソウル大学校図書館、九州大学文学部図書館などで朝鮮陶磁受容の端緒となった明治末期における高麗青磁受容および浅川兄弟の業績に関する文献調査を中心に行った。 2. 1910年代から1945年にかけて、いわば"朝鮮陶磁ブーム"とも言うべき契機を経て、日本の近代陶芸家たちの制作へも大きな影響を与えた。今年度は、益子陶芸美術館、益子参考館、愛知県陶磁資料館などで朝鮮陶磁を積極的に取り入れた冨本憲吉や濱田庄司、河井寛次郎ら「民藝」運動の陶芸家が雑誌等に発表した文献収集および作品調査と、朝鮮に渡り青磁の調査も行った人物として、京都市陶磁器試験場を経て満州等にわたり科学的知識を以て中国陶磁を再現し日本での産業化に貢献しようとした小森忍の作品調査を行った。
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