研究課題
研究代表者は、2009年9月にロンドンのテート・モダーン、ヴァールブルグ・インスティテュート、ヴェネツィア・現代アーカイブ他において、作品調査及び閲覧調査を行った。その内容は、デ・キリコやカッラ、ボッチョーニをはじめとする20世紀イタリアの画家の美術史的記述に関する調査研究、ヨーロッパの前衛美術の受容と批評に関する調査研究、未来派およびデ・キリコに関する作品調査・資料調査及び収集を主とする。また、2009年がマリネッティの「未来派宣言」」から100年を数えることから、欧米では展覧会、書籍や論文集の刊行が続いた。そのなかで、今年度は特に未来派や未来派をめぐる研究をめぐって、国内外の研究者やアーティストと意見交換をすることに努めた。展覧会に関連する主な調査研究として、象徴主義絵画、ポスト印象派の時代の美術に関する研究を行った。特に、1910年に生まれた「ポスト印象派(英:Post-Impressionism)」という呼称に関して調査を行うなかで、テート・アーカイブ所蔵の、ロジャー・フライによるポスト印象派展の展覧会カタログ(1910年、1912年)を閲覧・複写し、出品作品・展覧会の組織内容なども把握することができた。日本におけるポスト印象派の受容、語の紹介に関する調査研究と併せて、その成果の一部は『オルセー美術館展2010「ポスト印象派」』(展覧会カタログ)に発表した。100年前に生まれた「ポスト印象派」の概念は、近年批判的に再検討されており、その語が誕生した当時の歴史的状況をあらためて明らかにし、これを広く発信することは重要意義を持つものと考える。また、この調査研究からは、前衛絵画の受容と批評の状況に関する理解を深める上でも、今年度の計画の一つである分析の枠組みの構築にあたっても、多くの示唆を得ることとなった。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 図書 (1件)
春秋 No.516
ページ: 1-5
オルセー美術館展2010「ポスト印象派」(展覧会カタログ)
ページ: 223-225
Crossing Cultures : Conflict, Migration, Convergence (第32回国際美術史学会論文集) 1
ページ: 661-666